地学 II
2024年度 1学期 火曜 2限 (4月9日開始) AC 201教室
各回の内容
- 毎回ここ http://macroscope.world.coocan.jp/ja/edu/ris/tigaku/index.html に書いていきます。
- 4月9日 【第1回】 序論: 地学のひろがり と この授業の範囲，空間スケールと時間スケール，物理量の次元とSI単位
- 4月16日 【第2回】 地球の形と大きさ、天体の見かけの運動、地球の自転と公転
- [地球の形と大きさ、地球の自転と公転]
- 『図録』 で関係するおもなところ
- 第1編 1 「地球の形と大きさ」
- 第5編 8 「天球座標と暦」、9 「地球の自転」、10「地球の公転」、11 「惑星の運動」
- 4月23日 【第3回】 地学を論じるのに必要となるおもな物理法則
- [物理法則に注目すること、質量保存の法則]
- [エネルギー保存の法則、エネルギーの流れ]
- エネルギーの単位 J [ジュール]、単位時間あたりのエネルギーの流れ (仕事率、電力) の単位 W [ワット] 、
単位面積・単位時間あたりのエネルギーの流れの単位 W/m2 [ワット 毎 平方メートル] に慣れよう。
- 電気器具の「ワット数」は (たいてい) 消費電力。その一部分が有効な仕事や光などになる。
- かつてつかわれた単位「馬力」は複数の定義があるが、そのうち「フランス馬力」は 735.5 W。
1頭の馬がする単位時間あたりの仕事の代表値。(馬が えさ から得るエネルギーはそれより多く必要。)
- 人の1人あたりの発熱 (人体から大気にうつる熱) は 概算で 約 100 W といわれる。
(根拠をわたしは確認していない。
人が食物から得るエネルギーを昼夜平均して単位時間あたりにした数値と対応するだろうか。これも未確認。)
[2024-04-24 記述を改訂しました]
- 食物について俗に「カロリー」という単位はキロカロリー (kcal) で、約 4.2 キロジュール (KJ)。
これではかられるのは食物がもつ化学エネルギーで、人が食べて消化すると他の形のエネルギーに変換される。
(ちかごろは KJ 表示もふえてきた。)
- 地球上に太陽からくる放射 (光) のエネルギーの流れは、条件が理想的によいとき、
太陽に正面をむけた面の面積あたりにして、 約 1.4 kW/m2。
[2024-04-24 記述を改訂しました] くわしくは別の回に。
(太陽放射のエネルギーは、時間で累積して MJ/m2 などの単位でしめすことも多い。)
- [課題]
日常生活またはこれまでの学習の中で出会った、2種類以上の別々の量を、
エネルギー J、単位時間あたりのエネルギーの流れ W、単位時間・単位面積あたりのエネルギーの流れ W/m2 のいずれかの単位にそろえて比較してみてください。
- (すみませんが、各人の答えが適切かどうかコメントをかえすことができそうもありません。
全体を見て重要な誤解があれば指摘します。)
- (つぎの回のページのはじめの部分にちょっとふれました。)
- 4月30日 【第4回】 放射 (電磁波によるエネルギーの流れ)、恒星の出す放射・距離・見かけの明るさ
- 5月7日は月曜日の授業日です。
- [2024-05-11] 「太陽の活動」関連のニュース: 2024年 5月 8日 ごろから、太陽で大きなフレアとコロナ質量放出が起きており、
5月 11日 ごろから、地球上に、磁気あらし、低緯度にひろがるオーロラなどの現象をおこしています。
茨城県 柿岡 の 気象庁 地磁気観測所で観測された 地磁気水平成分の長期平均からの偏差は、
1924年からの観測で第9位の大きなものだったそうです。
磁気あらしは 12日 0時現在 まだつづいており、電力網などへの影響の心配もつづいていました。
13日にはよわまり、14日にはおさまったとみられます。
- [外] (情報通信研究機構 2024-05-10) 大規模太陽フレア発生に関する臨時情報 https://swc.nict.go.jp/extreme.html
- [外] (気象庁 2024-05-11) 地磁気の大きな乱れが観測されています https://www.jma.go.jp/jma/press/2405/11a/20240511_chijiki.html
- [外] (情報通信研究機構) 宇宙天気予報 https://swc.nict.go.jp/
- [外] (気象庁) 地磁気観測所 https://www.kakioka-jma.go.jp/
- 5月14日 【第5回】 太陽、恒星とその「進化」
- [太陽、恒星とその「進化」] ← 今回はおもに太陽について見ていきます。
- 『図録』 で関係するおもなところ
- 第5編 12-13節「太陽の構造 (1)(2)」、14節「太陽の活動」
- 第5編 15節「恒星の性質」、16節 [HR図」、17-18節「星の一生 (1)(2)」
- [第5回小レポート課題] (授業後補足)
- 5月21日 【第6回】 天体までの距離、銀河、宇宙の膨張、宇宙のはじまり
- 5月28日 【第7回】 太陽系の天体、地球型惑星と木星型惑星、太陽系外の惑星
- 6月4日 【第8回】 惑星の放射エネルギー収支
- 6月11日 【第9回】 惑星の放射エネルギー収支 (つづき)、地球の気候システム (大気・海洋・陸水・雪氷) の概観
- 6月18日 【第10回】惑星 (つづき)、地球のエネルギー収支の緯度・季節分布
- 6月25日 【第11回】大気の大循環
- [(大気や海洋での) 上下の対流と水平に近い対流]
- [大気と海洋の大循環] (松山・増田 2021 第4章)
- 小レポート課題
- 温度に比例する内部エネルギーの南北方向の輸送を考えるために、
温度 T と 風速の南北成分 v (南風が正) がそれぞれ波型の時間変化をしている状況を考える。
つぎのばあいに、T の平均からのずれ T' と v の平均からのずれ v' の積を平均したものの符号はどうなり、
エネルギーの南北輸送への寄与はどちらむきになるか。
ただしここで「平均」としては波の1周期ぶんの時間平均を考える。
- (a) 周期が同じで、v' が負のとき T' が負 (北風が寒い) となる位相関係
- (b) 周期が同じで、v' が正のとき T' が負 (南風が寒い) となる位相関係
- できれば、そのほか、周期が同じで位相が (1/4)周期ぶんずれているばあい、
一方の周期が他方の半分のばあいなども考えてみるとよい。
- [2024-06-26 リンク追加]
- 雲と降水、熱帯低気圧、温帯低気圧の話は省略します。上記ページや『図録』の関連するところを見てください。
- 7月 2日 【第12回】 海洋の大循環、雪氷圏
- 7月 9日 【第13回】 雪氷圏、グローバルな気候の変化、地球の歴史のなかの気候変化
- 7月 16日 【第14回】 グローバルな気候の変化、地球の歴史のなかの気候変化
- 7月 23日 【第15回】海陸分布がもたらす気候の特徴
- 期末レポート 計算問題と論述問題、7月16日と23日に分割出題、8月1日しめきり。
わたしの教材用ウェブページの記号
- [*] アクセス制限があります。パスワードで読めるようにします。
- [外] わたしの作成した教材でなく他者によるページへのリンクであることを明示するものです。
(これがなくても他者のページであるばあいもありますが。)
- [用語補足] [補足] わたしのブログ記事へのリンクです。
これまでいろいろなところで授業をしてきて説明しきれなかったことの補足として書いたものが多いです。
書きかたが気まぐれですが、興味のある人は読んでみてください。
(なお、わたしのブログには授業とまったく関係のない話題の記事もあります。)
- [ウェブページでの数式の表現についてのおことわり]
科目の趣旨説明
2年生向けの自然科学の科目であり、
教職課程をとる人の理科の教科に関する科目でもあります。
シラバスに、つぎのように趣旨説明を書きました。
「地学I」とあわせて，中学・高校理科の地学分野の対象となる宇宙と地球の科学をだいたいカバーする．「地学 I」がおもに地球内部をあつかうのに対して，「地学 II」は，宇宙・天文と，地球の大気・水圏をあつかう．ただし，エネルギー保存則にもとづくエネルギー循環系としての理解に重点をおく．宇宙・天文では電磁波によるエネルギーの流れ，大気・水圏ではそれにくわえて流体の運動によるエネルギーの流れが重要である．
講義をし、小課題を出します。
中間と期末にちょっと重いレポート課題を出します。
(パソコンをつかいたくなるような計算 (電卓でも可能な程度にするつもりですが) をしてもらいたいので、教室での試験にはしないことにしました。)
教材提示は、個人ウェブサイトのこのページと、
ポータルサイトの「オンライン授業」のシステムのなかのこの授業のページをつかいます。
受講生は、その両方を、毎回授業の前と後に見るようにしてください。
(対面授業で課題を出さない回は「オンライン授業」のほうにはなにも書かないばあいもあります。)
シラバスでは「教科書」としましたが、図を見るために、高校地学用の図集をつかいます。
図集からとった図をウェブページからリンクすることは (原則として) しないので、
各自、図集を持ってください。教科書としてつかう図集を前年度と変えました。
旧版を参照してもかまいませんが、章・節のたてかたにちがいがあります
(下の「教科書」のところのリンクさきの「読書メモ」に書きました。)
また、他社の図集を参照してもかまいませんが、対応箇所は自分でさがしてください。
そのほか、いろいろな本の紹介をします。図書館の本を読む習慣をつけてください。
「WebClass」その他の授業支援ツールは、つかわない予定です。
シラバスで予定した授業内容
だいたいここにのべた主題をカバーする予定ですが、順序などは変更することがあります。
- 1. 序論: 地学のひろがりとこの授業の範囲、空間スケールと時間スケール、物理量の次元とSI単位
- 2. 地球の形と大きさ、天体の見かけの運動、地球の自転と公転
- 3. 物理法則に注目すること、質量保存、エネルギー保存、エネルギーの流れ
- 4. 放射 (電磁波によるエネルギーの流れ)、恒星の出す放射・距離・見かけの明るさ
- 5. 恒星 (太陽をふくむ) のいろいろ、HR図、核融合反応、恒星の「進化」
- 6. 天体までの距離、銀河、宇宙の膨張、宇宙のはじまり
- 7. 太陽系の天体、地球型惑星と木星型惑星、太陽系外の惑星
- 8. 地球の気候システム (大気・海洋・陸水・雪氷) の概観
- 9. 全地球平均での気候システムの放射収支、温室効果の初歩的理解
- 10. 放射収支の緯度分布と季節変化、その地球の自転・公転との関係
- 11. 大気の大循環
- 12. 海洋の大循環、海と陸があることによる気候の特徴
- 13. 地球上の水循環、雪氷圏
- 14. 地球の歴史のなかでの気候、雪氷、大気成分 (とくに二酸化炭素) の変化
- 15. エネルギーと水の循環からみた気候システム、そして地球温暖化
レポートと成績について
- 成績評価は、期末レポート、中間レポートを主とします。
- 出席点はつかいません。
- 小レポートの提出状況を出席点に近い意味で加味します。
- 病気や教育実習など理由があってポータルサイトの期限までにレポートが出せなかった人は、
e-mail で送ってください。
- 過去の増田の「地学 II」をとって、小レポートを提出したが単位をとれていない人から、
申し出があれば、過去の年度の小レポート提出実績を今年度のかわりにみとめることがあります。
中間レポート、期末レポートは今年度の提出が必要です。
教科書・参考書
シラバスで「教科書」というあつかいにしましたが、
図を参照するために、高校地学用の図集をつかいます。
(大学の教材としては、高校用の図集は、情報の出典の記述が不じゅうぶんであることが残念なのですが、
1冊の本でたくさんの図を参照できることを優先して、つかうことにしました。)
2024年度は、つぎのものを、『図録』として参照します。
- 数研出版 編集部 編, 2022: 『[新課程] (視覚でとらえる フォトサイエンス) 地学図録』。
数研出版, 224 pp. ISBN 978-4-410-29094-7.
[読書メモ]
旧版
内容は新版とほぼ同じですが、項目の順序がちがっています。
- [数研出版 『図録』 の新旧対照表]
- 数研出版 編集部 編, 2018: 『(改訂版 視覚でとらえるフォトサイエンス) 地学図録』。
数研出版, 224 pp. ISBN 978-4-410-29093-0.
[読書メモ]
- 数研出版 編集部 編, 2016: 『(視覚でとらえるフォトサイエンス) 地学図録』。
数研出版, 216 pp. ISBN 978-4-410-29092-3.
[読書メモ]
他社の図集
それぞれ最新の読書メモをリンクしておきます。過去の情報はそこからリンクをさかのぼってください。
第一学習社『図説』の旧版との対応については、2023年度の授業ページをみてください。
- [高校地学用図集の構成] 3社の図集のおおまかな対照表
- 西村 祐二郎、杉山 直 監修, 2022:
『 [新課程版] スクエア 最新図説 地学』。広島: 第一学習社, 232 pp. ISBN 978-4-8040-4710-2.
[読書メモ]
- 浜島書店 編集部, 2021 初版, 2023 二訂版:
『 (二訂版) ニューステージ 地学図表 — 地学基礎 + 地学 対応 EARTH SCIENCE』。
浜島書店, 233 pp. ISBN 978-4-8343-4018-1.
[読書メモ]
参考書
シラバスに「指定図書」としてつぎのものをあげました。
大学の図書館にあるはずです。(『一般気象学』は1999年版でもかまいません。)
- 半田 利弘, 2011: 『基礎からわかる天文学』。誠文堂新光社。978-4-416-21132-8.
[読書メモ]
... 天文学の大学初級の教科書です。数式は少なめです。
見かけの天体の動きについてはくわしくありません。
- 小倉 義光 (初版 1984) 第2版 1999, 第2版 補訂版 2016: 『一般気象学 第2版 補訂版』。東京大学出版会, 308 pp. ISBN 978-4-13-062725-2.
[読書ノート]
[第2版の目次書きぬき]
[補訂版の読書メモ]
... 気象学の定番といわれる教科書です。なかみがつまった本です。
- 地学読本刊行小委員会, 2009: 『地学は何ができるか』。愛智出版。ISBN 978-4-87256-414-3. [本の紹介ページ]
... 大気の章をわたしが書きました。この授業の内容とかさなるところがあります。
宇宙の章も参考になると思います。
- 松山 洋、増田 耕一 編, 2021: 『大気と水の循環』。朝倉書店, 136 pp. ISBN 978-4-254-16076-5.
[読書メモ]
... わたしが半分ほどを書いた本です。この授業の内容とかさなるところがあります。
地球温暖化についてはくわしくありません。
- 岡村 定矩 [さだのり]、芝井 広 監修、縣 [あがた] 秀彦 編著, 2022:
『すべての人の天文学』。日本評論社, 257 pp. ISBN 978-4-535-78946-3.
... 天文学の大学初級の教科書で、おおぜいの著者によって広い範囲をカバーしたものです。
[読書メモ]
- Andrew King 著 (2012), 中田 好一[よしかず] 訳, 2013:
『星 -- 巨大ガス球の生と死』 (サイエンス・パレット SP-010)。丸善出版。
... 恒星でおこっている原子核反応と、恒星の「一生」あるいは「進化」についての解説。
[読書メモ]
- 佐々木 貴教, 2017: 『「惑星」の話』。工学社。
... 惑星科学の入門書。著者は太陽系形成論の研究者。
[読書メモ]
- ダニエル・フライシュ [Fleisch]、ジュリア・クレゲナウ [Kregenow] 著 (2013) 河辺 哲次 訳, 2014:
『算数でわかる天文学』。岩波書店, 254 pp.
ISBN 978-4-00-730989-2.
... 天文に関する数量の計算に、四則演算でせまる本。
[読書メモ]
- 杉本 憲彦、杵島 [きしま] 正洋、松本 直記, 2020:
『はじめて学ぶ 大学教養地学』。慶應義塾大学出版会, 318 pp.
ISBN 978-4-7664-2662-5.
... 高校地学とだいたい同じ範囲をカバーした大学初級教科書。
[読書メモ]
- 渡部 雅浩, 2018:
『絵でわかる 地球温暖化』。講談社, 185 pp. ISBN 978-4-06-511946-4.
... 地球温暖化の話題を中心とした、気候の変化・変動についての入門書。
[読書メモ]
このほかにも、おりにふれて本を紹介します。
(更新) 2024-07-23
増田 耕一 (MASUDA Kooiti)