2022年度
気候・気象学
2022年度 1学期 木曜 3限 (4月14日開始) A309教室 (昨年度と時間がちがいます。)
気象・気候に関する一連の科目の基礎となる科目です。
シラバスに、つぎのように趣旨説明を書きました。
気候学・気象学を深く学ぶための基礎知識を学ぶ．分野全般にわたる概論ではなく，気象学のうちの気象力学の基礎概念に重点をおいて，物理法則にもとづく物理量の計算ができるようになることをめざす．高校(理科系)の数学に初歩の微分方程式をくわえた数式に慣れる．空間分布をもち時間とともに変化する物理量のさまざまな切り口による図示に慣れる．気候・気象現象について考察できる能力の育成をめざす．
第1回は、気象学・気候学全体をおおまかにみた話をします。
その材料はこの授業ページの「各回の内容」の「第1回」のリンクさきページに置きます。
用語がいろいろ出てきますが、全部をすぐに理解する必要はありません。
学期のあいだにだんだん理解するようにしてください。
第2回からは、だいたい教科書にそって、講義をし、小課題を出します。
中間と期末にちょっと重いレポート課題を出します。
(パソコンをつかいたくなるような計算 (電卓でも可能な程度にするつもりですが) をしてもらいたいので、教室での試験にはしないことにしました。)
教材提示は、個人ウェブサイトのこのページと、
ポータルサイトの「オンライン授業」のシステムのなかのこの授業のページをつかいます。
受講生は、その両方を、毎回授業の前と後に見るようにしてください。
(対面授業で課題を出さない回は「オンライン授業」のほうにはなにも書かないばあいもあります。)
「WebClass」その他の授業支援ツールは、つかわない予定です。
各回の内容
当初は昨年度とおなじ進みかたを想定して日付を入れておきますが、進みかたによって変更していきます。
- 4月14日 【第1回】
- 4月21日 【第2回】 地球大気の概観 (教科書の第1講), 理想気体の状態方程式の大気への応用 (2.1, 2.2)，気圧の鉛直分布の概観・静水圧のつりあい (2.4)
- 4月28日 【第3回】 水の相変化，大気中の水蒸気 (2.3)
- (5月12日、19日 【第4-5回】 大気の安定度 (第3-4講) ... 断熱変化, 温位, 乾燥対流, 湿潤対流, フェーン現象など)
- 5月12日 【第4回】
- 5月19日 【第5回】
- 5月26日 【第6回】 雲と降水 (第5講)
- 6月 2日 【第7回】 放射 (第6講)
- 6月 9日 【第8回】 放射 (第6講) つづき、大気と地表面のエネルギー収支 (図9-8)、温室効果
- [放射]
- 出題のつごうで、中間レポート課題を分割し、今回は前半を出します。
- [中間レポートの1 出題] (しめきり 6月23日) ← 6月12日 しめきり日の記述を訂正し、問題の補足を書きました。
- 6月16日 【第9回】 大気の力学 (第7-8講)
- [大気の力学 (1)] ... 大気に働く力 (重力、気圧傾度力、摩擦力) と 見かけの力 (コリオリの力), 地衡風のつりあい
- 6月23日 【第10回】大気の力学 (第7-8講)
- 6月30日 【第11回】 大気の大循環 (第9講)
- 7月 7日 【第12回】 温帯低気圧と傾圧不安定 (第11講)、大気の大循環 (第9講) ... 温帯の循環
- 7月14日 【第13回】 熱帯低気圧と台風 (第12講)
- 7月21日 【第14回】 日本の気象と気候 (第10講)
- 7月28日 【第15回】 気候の変動 (第13講)
- [2022-08-18] 採点をおえました。いくつか気づいたことです。
(9月はじめごろに、別ページに移動し、ここにはリンクを残す予定です。)
- 中間レポート 2 の地衡風の計算について
- 等圧面高度と地衡風の関係にある風は、
温帯では、南北どちらの半球でも、夏と冬で、だいたい西風 (例外的に東風のところがある) なのですが、
風速の大きさが、北半球の夏に弱くなることに気づいてほしかったのです。
- どちらかの半球で風速の符号が負になっている答案がありました。
空間座標の南北方向は北向きを正にとります (北にいくほど値が大きくなる)。
緯度φは北緯を正にとるので南半球では負になります。すると sinφも南半球で負になります。
等圧面高度は温帯では高緯度側が高いので、その南北傾度の符号は両半球で逆になります。
コリオリパラメータの符号と気圧傾度力の符号がうちけしあうので、
地衡風の東西成分は、どちらの半球でも、正 (西風)になります。
(地球の対流圏の循環はおおまかには赤道に対して南北対称なので、
北半球で西風ならば南半球でも西風になるはずだ、と考えることもできます。)
- 地衡風の大きさが一見もっともなのだけれど、
南北半球や夏と冬のちがいがわずかしかない答案がありました。計算式を見たら、
等圧面高度の南北の差ではなく鉛直方向の差をとっていました。
「∂z/∂y」という表現の y を鉛直座標と誤解したのでしょうか。
一般には y を 鉛直座標につかうこともありますが
(昨年度の「物理学 I」でつかった力学の教科書の例題にもそういうものがあった)、
気象学ではふつう y は南北方向です。もしそうでなくても、たぶん水平面のうちのどちらかの方向です。)
この種類のまちがいは、すこしだけの減点にしましたが、まちがったままではいけないので、
地衡風の式 (z 座標のばあい、p 座標のばあい、それぞれ) を見なおしておいてください。
- 期末レポート 2 の計算について
- この趣旨は、中緯度 (温帯) では、気温と風速の南北成分の相関があり、
それがエネルギーの南北輸送にきいていることを、実際の数値でたしかめることでした。
- わたしが実際の 3次元の格子点データをしばらくつかっていなかったので
(水平2次元ならばつかっていたのですが)、準備にてまどり、
自分で計算しないまま出題してしまいました。
見なおしてみると、趣旨がわかりにくい事例でした。
- 中緯度では、気温と風速の南北成分との積の平均のうちで、
平均の積よりも、平均からの偏差どうしの積の平均のほうが重要なことが多いのです。
しかし、この事例のデータでは、平均の積のほうが1けたぐらい大きいのでした。
- エネルギー輸送量の計算は、期待どおりの答えを出してくれた人もいましたが、少人数でした。
出題の際の説明がたりなかったかと思います。
これについては、数値を入れた補足説明を書こうと思いますが、
できるのは9月はじめごろになる見こみです。
わたしの教材用ウェブページの記号
- [*] アクセス制限があります。パスワードで読めるように設定します。
- [外] わたしの作成した教材でなく他者によるページへのリンクであることを明示するものです。
(これがなくても他者のページであるばあいもありますが。)
- [用語補足] [補足] わたしのブログ記事へのリンクです。
これまでいろいろなところで授業をしてきて説明しきれなかったことの補足として書いたものが多いです。
書きかたが気まぐれですが、興味のある人は読んでみてください。
(なお、わたしのブログには授業とまったく関係のない話題の記事もあります。)
教科書
「指定図書」
シラバスに「指定図書」としてつぎのものをあげました。
教科書的なものをいくつか読みくらべてみることをすすめる、という趣旨です。
大学の図書館にあるはずです。
(『一般気象学』は1999年版、『はじめての気象学』は2015年版かもしれませんが、それでかまいません。)
- 小倉 義光 (初版 1984) 第2版 1999, 第2版 補訂版 2016: 『一般気象学 第2版 補訂版』。東京大学出版会, 308 pp. ISBN 978-4-13-062725-2.
[読書ノート]
[第2版の目次書きぬき]
[補訂版の読書メモ]
... 定番といわれる教科書です。なかみがつまった本です。
- 浅井 冨雄, 新田 尚 [たかし], 松野 太郎, 2000: 『基礎気象学』。 朝倉書店, 202 pp. ISBN 4-254-16114-X.
[(簡単な) 読書ノート]
[目次書きぬき]
... これも大学レベルの教科書です。大気大循環や、雲をともなう対流などに、重点があります。
- 田中 博, 2017: 『地球大気の科学』 (現代地球科学入門シリーズ 3)。共立出版, 305 pp. ISBN 978-4-320-04711-2.
[読書メモ (目次書きぬきをふくむ)]
... 大学上級ぐらいの教科書です。中高緯度の対流圏の大気循環とその力学に重点があります。
- 田中 博, 伊賀 啓太, 2015, 改訂版 2021: 『はじめての気象学』 (放送大学印刷教材)。放送大学教育振興会 (発売: NHK出版), 258 pp. ISBN 978-4-595-32288-4.
[2015年版の読書メモ (目次書きぬきをふくむ)]
[改訂版の読書メモ]
... 放送大学の教科書です。数式はすくなめですが、大気の力学に重点があります。
2022年度前期の放送は、衛星放送 232 チャンネルで、木曜 16:30-17:15 にあります。4月14日が第2回です。
- 釜堀 弘隆, 川村 隆一, 2018: 『(トコトン図解) 気象学入門』。講談社, 244 pp. ISBN 978-4-06-155239-5.
[読書メモ (目次書きぬきをふくむ)]
... 小倉『一般気象学』のまえに読むために書かれた本です。図解が多く、
数式はすくなめです (それは長所でも短所でもあります)。
- 松山 洋、増田 耕一 編, 2021: 『大気と水の循環』。朝倉書店, 136 pp. ISBN 978-4-254-16076-5.
[読書メモ]
... 第1～6章、8章をわたしが書きました。授業内容とかさなるところがあります。
そのほかの参考書
少しずつ追加していきます。
- 稲津 將 [まさる], 2022: 『気象学の教科書』 (気象ブックス 047)。成山堂書店, 203 pp. ISBN 978-4-425-55461-4.
[読書メモ (目次書きぬきをふくむ)]
... 気象学全般の入門 (立正大学でいうと「環境気象学概論」にあたるか?) の要点をまとめた教科書です。
数式はすくなめです。運動方程式にたちいらず、静水圧のつりあいと地衡風のつりあいを力のつりあいとして導入しています。
なお、数式の中の物理量の単位を省略しているところが多いことに注意が必要です。
(更新) 2022-08-18, 2023-06-14
増田 耕一 (MASUDA Kooiti)