• 阿部 紘久 [ひろひさ], 2009, 第57刷 2023: 文章力の基本 — 簡単だけど、だれも教えてくれない 77のテクニック。日本実業出版社, 221 pp. ISBN 978-4-534-04588-1.

四六判 横書きのペーパーバック。わたしが2025年2月に本屋の店頭 (ビジネス書のうちの文章の書きかたのところ) で見つけて買ったのは、2023年4月発行の第58刷である。ふつうならば「刷」によるちがいはわずかなので初版年の出版物としてあつかう。ところが本書は「はじめに」につづいて「内容の刷新について」という文書があり、第57刷で章だてを変えたと書かれている。そうすると、第57刷はむしろ第2版のようなものとみるべきだろう。CiNii Books を検索してみると、第57刷について、「内容の刷新について」に留意して、初刷とは別の (図書カードに相当する) 書誌レコードがたてられている。それで第57刷が2023年1月にでたことがわかった。しかし残念なことに第57刷の書誌レコードにつけられた目次の章だては初刷のものである。

著者は東京大学の学士 (ウェブ検索でみつけた他の本の著者紹介によれば 1967年卒業、教育社会学専攻) で、日本の大企業につとめ、外国にある合弁会社の経営をふくむ国際ビジネスにたずさわってきた。その後、大学で文章の書きかたをおしえている (本書のような内容の授業なのだろう)。

本書は、文章の書きかたの教本である。文法的なこと (主語・述語、てにをは、接続詞など) もでてくるし、文章の構成をどのようにかんがえるかという話もある。章に分類されてはいるものの、あまり体系的ではないが、実務的には有用な本なのだろうとおもう。

折りかえしのあとに目次をつける。

===== 目次 =====
[各節の節番号のまえに「ヒント!」がついているのだが、ここでは省略した。]
はじめに
– 内容の刷新について [第57刷で]
CONTENTS
第1章 短く書く
– 01 短く言い切る勇気を持つ
– 02 一度にたくさん運ぼうとしない (荷物は、何回かに分けて運ぶ)
– 03 どうしたのか (述語) を早く示す
– 04 幹を1本1本立てていく
– [コラム 1] 文章力とは?
第2章 文の前半と後半が手をつなぐ
– 05 何がどうしたのか (主語と述語)
– 06 何をどうしたのか (目的語と述語)
– 07 旅行は「買う」のではなく「する」 (述語の共用にご用心)
– 08 宙に浮いた言葉は書かない
– 09 「こと」で受ける
– 10 能動と受動
– [コラム 2] 想像力が決め手
第3章 分かりやすく書く
– 11 読み手に頭を使わせない
– 12 主役を早く登場させる
– 13 省略された主語は変えない
– 14 修飾語は直前に置く
– 15 理由の説明から入らない
– 16 挿入句は別の文にする
– 17 ぼやかして書かない
– 18 曖昧[あいまい]接続を避ける
– 19 箇条書きにしてみる
– 20 図にしてみる
– [コラム 3] 「書くのが遅い」という反省について
第4章 簡潔に書く
– 21 いきなり核心に入る
– 22 削れる言葉は徹底的に削る
– 23 同じ言葉が続いて出て来たら、1つにする
– 24 同じ意味の言葉を重複して書かない
– 25 似たような言葉をたくさん並べない
– 26 より短い表現を探す
– 27 無意味な言葉は書かない
– 28 「これから述べます」は不要
– 29 「なぜなら」「理由としては」も不要
– 30 「と感じる」「と考える」を削る
– 31 「という」を削る
– 32 漢語で飾らない
– 33 余分なつなぎ語を削る
– 34 余計な結びも書かない
– [コラム 4] 簡潔な文章は、無味乾燥か
第5章 的確に書く
– 35 論理的に首尾一貫させる
– 36 因果関係をつかむ
– 37 言葉は習慣である
– 38 本来の意味を考えて言葉を探す
– 39 関連する言葉との混同を避ける
– 40 列挙する時は、品詞を揃える
– 41 「両立する」か、「両立させる」か
– 42 「豊かにする」か、「豊かになる」か
– [コラム 5] 文章の種類によって書き方は変わるか
第6章 どんな内容を、どう構成するか
– 43 内容をなるべくシンプルに整理する
– 44 骨子を組み立て、段落に分ける
– – 1. 段落の意味
– – 2. 段落の骨子
– – 3. 段落の長さと数
– – 4. 文章構成の実際
– – 5. 要約力
– 45 同じ話はまとめて書く (基本は時系列)
– 46 キーワードに着目して構成を考える
– 47 カテゴリー分けし、小見出しを付ける
– [コラム 6] 日本語は曖昧か
第7章 「てにをは」を大切にする
– 48 「に」と「で」
– – 1. 時間には「に」、場所には「で」
– – 2. 存在には「に」、行為には「で」
– – 3. その他の使い分け
– 49 「に」と「を」
– 50 「を」と「が」
– 51 「を」と「で」
– 52 不要な「てにをは」の混入を避ける
– – 1.「で」の混入
– – 2.「の」の混入
– – 3.「を」の混入
– 53 必要な「てにをは」を省かない
– [コラム 7] 日本語そっくりの韓国語の「てにをは」
第8章 読点をどこに打つか
– 54 読点は、大きな意味の切れ目に打つ
– – 1. 「長い主語」の切れ目
– – 2. 「長い目的語」の切れ目
– – 3. 「原因」と「結果」、「理由」と「結論」の間
– – 4. 「前提」と「結論」の間
– – 5. 「状況・場の説明」と「そこで起きていること」の間
– – 6. 時間や場面が変わるところ
– – 7. 逆接に代わるところ
– – 8. 2つのものを対比する時
– – 9. 隣同士の修飾語の間に、予想外の関係が生じてほしくない場合
– – 10. よく使われる別の意味の表現と区別したい時
– – 11. ひらがなばかり、漢字ばかり、カタカナばかりが続く場合
– – パターン認識
– – 意味の固まりを読点で分断しない
– [コラム 8] 国際ビジネスパーソンも、まずは日本語の文章力を
第9章 表記と視覚効果にも心を配る
– 55 ホワイト・スペースを活用する
– – 1. 行間を適切に空ける
– – 2. 周囲のスペースをゆったり取る
– – 3. 段落の後のスペース、１行スペースを生かす
– 56 漢字で書くか、仮名で書くか
– – 1. 漢字本来の意味から離れた言葉は仮名で書く
– – 2. 横書きでも漢数字を使う言葉がある
– 57 セリフや考えを「 」でくくる
– 58 カッコと句読点を適切に使う
– 59 句点は、文末のみで打つ
– 60 ノイズの少ない文書をつくる
– [コラム 9] 明文化することの意味
第10章 共感が得られるように書く
– 61 具体的なエピソードから入る
– 62 五感を使って感じられるように書く
– 63 感動を押しつけない
– 64 強調する言葉は控えめに使う
– 65 持って回った表現、凝った表現は避ける
– 66 自分のことも事実に淡々と語らせる
– 67 読み手をあまり待たせない
– 68 読み手に謎をかけない
– [コラム 10] 技巧的な文章
第11章 話し言葉の影響を避ける
– 69 無意味な飾り (1) 「なります」
– 70 無意味な飾り (2) 「に対して」
– 71 無意味な飾り (3) 「中」「上」
– 72 短縮表現 (1) 文頭の「なので」
– 73 短縮表現 (2) 「基本」「結果」
– 74 逃げ腰表現 (1) 「かな」「かな」「かな」
– 75 逃げ腰表現 (2) 「部分」
– 76 ずらした表現 (1) 「そこまで」
– 77 ずらした表現 (2) 「余裕で」「普通に」
– [コラム 11] 文章の書き方は教えられるか
おわりに
===== ここまで =====