- 若濱 五郎, (1995): 雪と氷の世界 — 雪は天からの恵み。東海大学出版会, 157 pp. ISBN 4-486-01332-8.
1995年に出版された A5判 横書きのペーパーバック。多色刷りで、写真印刷用紙でない普通紙にしてはカラー写真もかなり鮮明である。
雪氷学の入門読みものである。同じ著者の NHKブックス『氷河の科学』が、わたしが氷河について知るのにとてもやくだった (いまでも図を引用することがある)。本書の第5章はそれの要約のようなものだと思う。
そのまえに、降る雪と積もった雪についての概説、雪による災害のこと、水資源のうちでの雪のやくわりの話がある。あとのほうには、地球全体の雪氷をまとめた「雪氷圏」という考えかた、気候変化のなかでの雪氷圏、地球の歴史のなかでの雪氷の変動の話がある。
このような広い視野をもてたのは、著者が北海道大学の低温科学研究所 (この名まえだが、ヘリウムが液体になるような温度の科学ではなく、H2Oが固体になるような温度の科学の研究所である) の所長をつとめ、本書が著者がその職を退職したあと企画されたからかもしれない (病気になって本の完成がおくれたそうだが)。ただし、海氷も雪氷のうちで重要な部分だが本書にはその話題は少ない。北大低温研には海氷を専門とする教員もいるのだが、紋別の観測所あるいは観測船にいることが多くて著者とのつきあいは少なかったのかもしれない。
本書は雪氷学の入門書としてすすめられると思う。しかし、もう売られていない。そして、かつて地球科学関係の出版を活発にしていた東海大学出版会は、「出版部」となって続いてはいるものの業務を縮小してしまった。別の出版社からでも可能であれば復刊してくださるか、あるいは、著者のあとにつづくかたがこれにかわる入門書を書いてくださるとありがたい。
文献
- 若浜 五郎, 1978: 氷河の科学 (NHKブックス)。日本放送出版協会。
折りかえしのあとに目次をつける。
===== 目次 =====
はじめに
目次
1章 冬きたる
– 雪の結晶
– 雪は天からの手紙
– “雲” が降る
2章 降る雪、積もった雪
– ドカ雪
– 雪は風流
– 世界の豪雪地
– 『北越雪譜』
– 『雪華図説』
– 雪との闘い
– 低温科学研究所の創設
– 雪氷学の発展
– 降雪の研究
– 積雪
– 雪の焼結 — “高温状態” にある雪、氷
– 雪、氷は変りもの
3章 雪氷災害と克雪
– 都市災害、雪対策、克雪
– 吹雪、地吹雪
– 雪崩
– 雪崩戦争
– 鉄道と雪崩
– 根曲り
– 着氷雪 — 樹氷・着氷
– 過冷却水滴 — 樹氷の原料
– 着氷の形態と気象条件
– 船体着氷
– 冠雪
– 着雪
– 電線着雪
– 列車着雪
– 雪の沈降力
– 雪と氷の雑記帳
– 凍土、凍上
– アイスレンズと凍上害
– 海氷・流氷
4章 雪どけ、雪は水資源
– 融雪 — 春きたる
– 水資源としての雪氷
– カラコルム山脈 — パキスタンの水源
– 大山脈は水源地
– 氷山曳航計画
5章 氷河
– 万年雪渓 — はまぐり雪渓、雪壁雪渓
– 氷河
– 氷河の上を歩く
– クレバス
– アイスフォール (氷瀑)
– モレーン (氷堆石) と氷河の侵食作用
– 迷子石と大氷河時代の発見
– 氷河氷の形成 — 雪から氷へ
– 氷河の流動
– 氷の結晶構造
– 雪の滑りによる変形
– 氷の流動則
– 氷河の岩盤上すべり
– 氷河の異常前進 — 氷河サージ
– サージは異常現象か?
6章 雪氷圏
– 雪氷の形態とその量
– 宇宙の雪氷
7章 雪氷と気候との関わり
– 地球の熱収支
– 大気と海洋の大循環
– 二酸化炭素と地球の温暖化
8章 氷床の深層掘削による古気候・古環境の復元
– 南極の氷を掘る
– 大氷河時代 — 氷期はなぜ起ったのか
# 最後にもう一度、身近な雪にもどって、雪国からのメッセージを一言のべる。
– 利雪、親雪時代
– 「雪は天からの銭[ぜに]である」
あとがき
参考書
索引
===== ここまで =====