「気象と水の科学」第5回レポート問題

ハドレー循環は、正味で、低緯度から高緯度にむかってエネルギーを運んでいる。

これを、気温 T、比湿 (空気の質量のうちの水蒸気の質量の割合) q、 等圧面高度 z、風速の南北成分 v の代表的な値によって、概算してみることにする。

エネルギーの南北方向の輸送量はつぎのように表現できる。

• 空気の単位質量あたりの内部エネルギーの南北方向 (北向きを正) の輸送量は 「(c_p T + L q ) v」と書ける。
  • c_p T v の部分は温度にともなう内部エネルギーの輸送である。
    • 【内部エネルギーの移流ならば、c_v T v [c_v は空気の体積一定での比熱容量] なのだが、 空気の体積変化にともなう仕事の項がちょうど R_air T v (R_air は空気に対する気体定数) にあたるので、 空気の圧力一定での比熱容量 c_p が出てくる。 この件についての入門的説明がまだできていない。 やや専門的説明は、[第5回の教材本文のページ]から 「(補足)」としてリンクした「大気のエネルギー、エネルギー収支、「熱収支」」の 一連の記事の中でのべた。】
  • L q v の部分は水蒸気にともなう内部エネルギーの輸送である。
• 空気の単位質量あたりの位置エネルギーの南北方向 (北向きを正) の輸送量は 「g z v」と書ける。

ここで定数とみなす数量はつぎのとおり。

• c_p: 空気の定圧比熱容量。1.0 × 10³ J/(kg K) 。
• L: 水蒸気の単位質量あたりの蒸発の潜熱。2.5 × 10⁶ J/kg 。
• g: 重力加速度。9.8 m/s²。

ハドレー循環の上側と下側はつぎのもので代表させる。観測にもとづく北緯15度の年平均値を単純化したものである。

• 上側: 気圧 200 hPa、高さ z = 12400 m、気温 T = 220 K、比湿 q = 0.00004 (0.04 g/kg、ここではゼロとみなしてよい)、風速の南北成分 v = +1 m/s。
• 下側: 気圧 850 hPa、高さ z = 1500 m、気温 T = 290 K、比湿 q = 0.01 (10 g/kg)、風速の南北成分 v = -1 m/s。

上側と下側の空気の単位質量あたりの南北エネルギー輸送量(北向きを正、単位 (J/kg)・(m/s) つまり (m³/s³) )をそれぞれ計算し、比較してみてください。

レポートとしての形を整える必要はありません。 ポータルサイトの「オンライン授業」の「大気と水の科学」の第5回のレポートのところに出してください。

発展課題 (レポートを求めるものではありません)

「上側」と「下側」が、それぞれ、大気全層の単位面積あたりの質量の 5分の1 の質量をもつ層であり、 それが北緯15度の緯線の全周におよぶとして、 北緯15度の緯線を横切る大気のエネルギー輸送量の総量を概算してみよう。 (10¹⁵ W のけたになるはず。)