IPCC第5次評価報告書に採用された予測型シミュレーションの数値を見る

[グローバルな気候の変化 (2)]の授業のとき、 そのページからリンクした [[*][IPCC第5次報告で使われた「RCP」濃度シナリオ、排出量、気候モデルの結果の全球平均地上気温] の図を見せた。

時系列データは、グラフで見たほうが情報がつかめることが多いが、 数値を知りたくなることもあるし、 複数のグラフをくらべるとき尺度をあわせたくなることもある。

ここでは、それとだいたい同じ情報を、数値データで持ってきて、 R でグラフにしてみる。 データファイルは表計算ソフトウェアで読みこむこともできるので、 表計算に慣れている人は、そちらで作図してみるのもよいと思う。

おもな情報源: IPCC 第5次評価報告書

IPCCの報告書は、有料の紙の本としても出版されているが、 IPCCのウェブサイト https://www.ipcc.ch からPDF形式で公開されている。

大気中の二酸化炭素濃度

Annex 2 から、つぎの情報をとりだした。

• ar5_hist_co2conc.txt: 実績の二酸化炭素濃度 (ppm)。1760年から2010年まで10年間隔。 Annex 2 の Table A2.1.1 (1401ページ) より。(この表には1755年から5年間隔で値があるが、わたしが10年間隔にまびいてしまった。)
• ar5_rcp_co2conc.txt: RCPの4つのシナリオの二酸化炭素濃度 (ppm)。 2000年から2010年まで10年間隔。 Annex 2 の Table A2.4.1 (1422ページ) より。

この両者をあわせて、つぎの R プログラムでグラフにしてみた。ただし、横軸の範囲を 1850年から2100年までにした。

• graph_co2conc.R

人間活動起源の二酸化炭素排出量

Annex 2 から、つぎの情報をとりだした。

• ar5_rcp_co2emission.txt: RCPの4つのシナリオの人間活動起源の二酸化炭素排出量 (Pg C/年)。 (「Pg C」は炭素としてペタグラム、ペタグラムは10¹⁵ g つまり 10¹² kg である。) 化石燃料によるぶんと土地利用改変によるぶんをわけた表もあるのだが、ここではその合計を採用した。 2000年から2010年まで10年間隔でしめされているが、 これは10年ごとの平均値で、たとえば「2010」は2005～2014年を代表している。 Annex 2 の Table A2.2.1c (1420ページ) より。

Annex 2 には 実績の二酸化炭素排出量の情報がみあたらない。 Global Carbon Project (https://www.globalcarbonproject.org/) で編集されたデータが ICOS (Integrated Carbon Observation System) のサイトの 「Data supplement to the Global Carbon Budget 2020」のページ ( https://www.icos-cp.eu/science-and-impact/global-carbon-budget/2020 ) にある。 そのページの「2020 Global Budget v1.0」のリンクさきのファイル Global_Carbon_Budget_2020v1.0.xlsx を ダウンロードし、そのうち「Global Carbon Budget」のワークシートを CSV 形式で保存した。 これには、1959年から2009年まで毎年のデータがある。 化石燃料によるぶんと土地利用改変によるぶんの数値が別々に記録されているが、 わたしはそれを合計してグラフにしてみることにした。

両者をあわせて、つぎの R プログラムでグラフにしてみた。

• graph_co2emission.R

全球平均地表温度 (偏差)

• ar5_hist_temp.txt: 観測にもとづく全球平均地表温度 (陸上は地上気温、海上は海面水温)の、 1961-1990年の平均からの偏差 (K)。1850年から2000年まで10年間隔。 ただし、10年の期間の統計値であり、たとえば「1990」は1990～1999年の期間をさしている。 Annex 2 の Table A2.1.3 (1409ページ) より。 ここでは、イギリスのハドレーセンターとCRUが推計したHadCRUT4にもとづく値を採用した。 (ほかにアメリカ合衆国のGISSとNCDCがそれぞれ推計した値があるが、対象期間がやや短い。) HadCRUT4については、推定値の中央値のほか、不確かさの幅が分布の5%と95%となる値の形でしめされている。 1986-2005年の平均は、これよりも +0.30 (± 0.03) ℃高い、という情報もある。
• ar5_rcp_temp1.txt (RCP 2.6, RCP 4.5)
• ar5_rcp_temp2.txt (RCP 6.0, RCP 8.5): CMIP5プロジェクトの、RCP濃度シナリオを与えた予測型シミュレーションの結果の全球平均地上気温の 1986-2005年の平均からの偏差 (K)。2010年から2090年まで10年間隔。 ただし、10年の期間の統計値であり、たとえば「2030」は2026～2035年の期間をさしている。 Annex 2 の Table A2.7.5 (1444ページ)より。 それぞれのシナリオにもとづく多数のシミュレーションでえられた値の分布の 5%、17%、50% (中央値)、83%、95% となる値が示されている。

両者をあわせて、つぎの R プログラムでグラフにしてみた。 ただし、温度の基準期間は 1986-2005年に統一し、時間軸上の位置は10年の期間の中央にした。 HadCRUT4については3本、シミュレーション結果の時系列は4×5本の折れ線がある。 実用的には線の数をしぼって表示するべきだが、ひとまず全部表示してみた。 同じシナリオのものは色と線の種類(破線かどうか)を同じにし、中央値を太めの線にした。

• graph_temp.R