- 白川 龍生 [しらかわ たつお], 2025: 雪のお遍路さん — 雪氷防災学入門。学術図書出版社, 140 pp. ISBN 978-4-7806-1383-4.
2025年9月にでた A5判 横書きのペーパーバック。
副題を見て買った。副題にあるとおり、雪氷防災学入門の大学教科書的な本だ。それでは「雪のお遍路さん」とはなにかというと、著者は、積雪の断面観測を、北見工業大学キャンパスの定点で継続しているのにくわえて、2013-14年から毎年冬に、北海道の南西部をのぞく全体にひろがる、(地点数はだんだんふえて、2024-25年のばあい) 42地点を巡回してやっている。それを応援してくれる同僚が巡礼にみたてて「お遍路さん」と呼んだのだ。北海道という空間スケールでの積雪の実態をとらえる、実践的な研究活動なのだ。
著者はJR北海道で鉄道線路の設計などの技術職をしていたが、北見工大の教員になってから雪氷防災に専門を移した。もちろんそのなかで鉄道や道路などの交通インフラストラクチャーをいかに維持するかという課題のおもみは大きい。
本書には、雪がふる条件などに関する気象学のことがらや、積雪断面観測のしかたや、なだれのおこるしくみなど、雪氷学の基礎的なことがらも、教科書的に説明されている。それから、積雪に適応するためのインフラストラクチャー (防雪林をふくむ) に関する工学や、除雪の体制、地域の雪氷防災計画などの社会工学的なことにおよんでいる。
折りかえしのあとに目次をつける。
===== 目次 =====
はじめに
– 謝辞
目次
第1章 雪とともに生きる
– 1.1 なぜ雪氷防災を学ぶのか
– 1.2 人類はいつから雪とともに暮らしてきたのか
– 1.3 江戸時代と雪の災害史 — 小氷期の社会への影響[
– 1.4 豪雪地帯対策の歩みと制度的対応
– 1.5 現代の豪雪地帯と雪氷災害のリスク
– – 1.5.1 豪雪地帯に生きる社会の変化
– – 1.5.2 雪氷災害の種類
– – – (1) 大雪
– – – (2) 雪崩・屋根からの落雪
– – – (3) 吹雪・地吹雪
– – – (4) 着氷・着雪
– – – (5) 雪氷路面
– – – (6) 融雪
– – 1.5.3 気候変動と新たな雪氷災害
– – 1.5.4 雪氷災害の多様性とリスク対応
– [コラム 1] 吹雪の向こうに見えたもの — 2013年オホーツク暴風雪災害の記録と教訓
第2章 雪が降り積もるしくみ
– 2.1 雪はどのようにして降るのか
– – 2.1.1 雲の成り立ちから雪が地上に届くまで
– – – (1) 雲の発生と雪になる条件
– – – (2) エーロゾルと降水粒子の形成
– – – (3) 降水粒子の成長過程
– – – (4) 雲粒の形成・発達と消失のしくみ
– – 2.1.2 水の相変化と気象との関わり
– – 2.1.3 雪結晶の分類とその意味
– – 2.1.4 雪になるか雨になるか
– 2.2 天気図からわかる冬の気象
– – 2.2.1 冬型の気圧配置と日本海側の降雪
– – 2.2.2 日本における低気圧の種類とその影響
– – 2.2.3 大気と水蒸気の相互作用と雪氷防災への応用
– 2.3 地上に積もった雪「積雪」
– 2.4 気象と雪氷の観測
– 2.5 気象情報の読み取りと活用
– [コラム 2] Furano bonchi powder (R) と「ふわサラ度 (R)」 — 降雪と積雪をつなぐ指標
第3章 積雪の調べ方と情報の読み取り方
– 3.1 積雪観測とは何か
– – 3.1.1 積雪観測の意義と方法
– – 3.1.2 積雪観測の歴史と定点調査
– 3.2 積雪断面観測
– – – 積雪深・各層の層位 / 雪温 / 雪質・粒径 / 密度 / 硬度 / 積雪水量 / せん断強度 / 含水率
– 3.3 雪質分類と積雪構造の変化
– – 3.3.1 雪質の分類と特徴
– – – 新雪 / こしまり雪 / しまり雪 / こしもざらめ雪 / しもざらめ雪 / ざらめ雪 / 氷板 / 表面霜 / クラスト
– – 3.3.2 雪質の変化と積雪構造の変態
– – 3.3.3 積雪断面構造の理解
– – 3.3.4 雪崩
– – – (1) 表層雪崩
– – – (2) 全層雪崩
– 3.4 積雪水量の測定とその意義
– – 3.4.1 積雪水量とその重要性
– – 3.4.2 観測事例 (その 1) 岩見沢における記録的大雪と積雪水量
– – 3.4.3 観測事例 (その 2) 帯広における記録的大雪とその特異性
– – 3.4.4 積雪水量の観測と活用の展望
– 3.5 積雪調査とその記録・発信
– – 3.5.1 積雪調査と記録の意義
– – 3.5.2 情報発信と地域との接点
– [コラム 3] 白き層に刻まれた時 — 北海道北見における積雪断面観測のあゆみ
第4章 冬と共存するための防雪インフラ
– 4.1 冬期気象とインフラの関係
– 4.2 防雪インフラの形と機能
– – – (1) 防雪林
– – – (2) 雪崩予防柵
– – – (3) スノーシェッド (雪覆い)
– – – (4) 雪庇 [せっぴ] 防止板と雪割板
– – – (5) 防雪柵
– – – (6) スノーシェルター・パーキングシェルター
– – – (7) 消雪・散水設備
– – – (8) 流雪溝
– 4.3 防雪林とその機能
– – 4.3.1 森林による防雪の特徴
– – 4.3.2 鉄道林の歴史と展開
– – 4.3.3 防雪林と法制度
– 4.4 防雪インフラの維持管理
– – 4.4.1 防雪インフラに求められる維持管理
– – 4.4.2 維持管理の課題と新たな技術
– – 4.4.3 設計段階からの維持管理性の考慮
– – 4.4.4 未来を見据えた防雪インフラのあり方
– [コラム 4] 鉄路の記憶とともに — 北海道・紋別の防雪林が守る新たな道
第5章 冬を支える除雪と排雪
– 5.1 除雪・排雪の意義と課題
– 5.2 鉄道における除雪の工夫
– – 5.2.1 鉄道における雪氷対策と除雪作業
– – 5.2.2 鉄道除雪の課題と今後の展望
– 5.3 道路・空港における除雪の工夫
– – 5.3.1 高速道路における除雪体制
– – 5.3.2 空港における滑走路除雪と安全運航
– – 5.3.3 視程支援技術と除雪支援システムの導入
– 5.4 市街地の除排雪と安全確保
– – 5.4.1 市街地特有の除雪課題と対応策
– – 5.4.2 排雪作業と雪堆積場の課題
– – 5.4.3 屋根雪と積雪荷重への備え
– – 5.4.4 地域連携とボランティア支援体制の整備
– 5.5 除雪・排雪の将来展望と地域対応
– – 5.5.1 技術革新による除雪作業の進化
– – 5.5.2 地域に根ざした持続可能な除雪体制づくり
– – 5.5.3 交通を止める判断とリスクマネジメント
– [コラム 5] 100年に一度の大雪 — 2004年1月・北見の記憶
第6章 雪氷防災計画
– 6.1 雪氷防災計画の基本的な考え方
– – 6.1.1 自然災害が起きるしくみと雪氷環境の変化
– – 6.1.2 防災制度の整備と災害対策基本法の意義
– – – (1) 国の仕組みと防災計画の体系
– – – (2) 災害発生時の体制
– – – (3) 民間・企業の役割とBCP [business continuity plan]
– – – (4) 雪氷防災対策への展開
– – 6.1.3 防災政策の変遷と現代の課題
– 6.2 行政対応と地域体制の実際
– 6.3 防災マニュアルの実効性と限界
– 6.4 防災気象情報の役割と課題
– – 6.4.1 防災気象情報の重要性
– – 6.4.2 警報・注意報の運用とリードタイムの考え方
– – 6.4.3 雪氷災害における情報運用上の課題と対応
– 6.5 未来の雪氷防災を支える考え方
– – 6.5.1 人口減少・気候変動下での雪氷防災
– – 6.5.2 タイムラインと地域力 — 雪害に備える具体的アプローチ
– [コラム 6] 気象予報士試験に挑んだ経験
第7章 雪のお遍路さん
– 7.1 なぜ広域調査を行うのか
– 7.2 調査活動の実際
– 7.3 見えてきた積雪の多様性
– 7.4 積雪観測の継続と展望
– [コラム 7] 広域積雪調査「雪のお遍路さん」のこと
付録 A. 天気図の見方と活用 — 雪と天気図を結びつけるために
– A.1 天気図とは何か
– A.2 気圧と風の関係
– A.3 冬の天気と上空の寒気
– A.4 冬型の気圧配置と雪
– A.5 温帯低気圧と前線
– A.6 前線ごとの雪の性質と災害リスク
– A.7 雪の兆候を天気図から読み取る
付録 B. 積雪観測に関わる物理量と単位
– B.1 物理量と単位とは
– B.2 積雪水量をイメージする
– B.3 積雪の密度とその測定方法
– B.4 大きなものをイメージするためのコツ — 面積と体積を感覚的にとらえる
参考文献
索引
===== ここまで =====